演劇感想3件2023
・「笑の大学」
先日、WOWOWで見ました。
三谷幸喜氏の傑作2人芝居と言われているそうですね。
1998年以来上演されてこなかった伝説のこのお芝居が、なんと今年再演されたと。
(チケットぴあより)
初演は西村まさ彦さんと近藤芳正さん。
今回はそれぞれを内野聖陽さんと瀬戸康史さんが演じる。
内野さんは最初、西村さんを思い起こさせるような目つきや声色、折り目正しさで、すごく西村さんっぽかったです。
瀬戸さんがまた「鎌倉殿」の時房アゲインという感じで、あのなんとも言えない弟感は本当に愛らしいですね。
物語は戦争の足音が忍び寄る時代の話で、内野さん演じる検閲官の向坂(さきさか)は芝居の台本を片っ端から検閲して上演許可・不許可を判断する。
瀬戸さんが演じるのは劇団「笑の大学」の座付作家・椿。
「こんなものに上演許可は出せない!」と向坂が厳しい顔で突っぱねるところから物語は始まり、最初こそ気持ちが折れそうだった椿も、向坂の無茶な要求を受け入れつつおもしろい本を書いてやろうと奮起するごとに作品も磨きがかかり、向坂も椿の新しい台本を心待ちにする。
笑ったことなど一度もないという向坂は、人を笑わせることに純粋すぎる椿に心が動かされるものの、検閲官という自分の職務にも忠実な男・・・
「感動」ということしかもう言えないですね。
すごくシンプルなこのストーリーが愛らしくてたまらない。
瀬戸さんがまた本当に愛らしい演技をされる。
内野さんも心がひん曲がった中年なのに愛らしい。
土星座!!と心で何度も叫んだ(瀬戸さん牡牛座、内野さん乙女座)
何もかもが確かすぎる。
瀬戸さんの「猿股失敬!」のギャグのキレ。
内野さんが「カラス」「武蔵」と言うだけで笑えてしまうこと。
演劇人のこういうとこ本当に尊敬します。
そして蟹座三谷さんの「人間大好き」というハートフルさが舞台を覆う。
三谷さんの大河見てても、「ちゃんと適役を当ててる」という安心感がいつもあるけど、「鎌倉殿」での瀬戸さんトキューサ役は今でも時々思い返すほど。
尾上松也さんとのやり取り、あそこだけで胸がいっぱいになるんですよね。
内野さんは「真田丸」で家康役。
家康っていろんな人がいろんなふうに演じてるけど、内野さん家康を見てしまうと、今の大河とかどうなんだろ?と思っちゃう。
内野さんは狡猾な中年役が本当にうまい。それなのに愛らしさをにじませるとこがすごいですよ。
イケメンとかそういう設定じゃない瀬戸さんと内野さんの職人的な演技をTVでも見たいものです。
・水谷千重子50周年記念公演「大江戸混戦物語ニンジャーゾーン」
なんでも3回目の50周年記念公演らしいです(バカ言ってる笑)
今回、御崎進(藤井隆)回に行ってきたんですよ!!
(明治座公式サイトより)
千重子の公演にはこれまで2回行ってます。
(「キーポンシャイニング歌謡祭」「水谷千重子50周年記念公演」)
明治座での公演といえば1幕目が千重子主演のお芝居、2幕目が千重子の歌謡ショー。
前回明治座に行ったときは「なんだかな」という感慨だけで笑えてきましたが、今回のニンジャーゾーンはもしかしたら前回より真面目要素が強かったかもです。
結構複雑で、なかなか頭を使いました。
座席が端っこだったので音声があんまりクリアじゃなかったことも、理解にエネルギーを使ったゆえんかも。
また、これまで友近色をほとんど表に出さず千重子に徹していましたが、今回のオープニングはなんとハイヒール講談!福田和子エピソード!!
こんなに福田和子が好きな人見たことない(笑)
私が見に行ったのはハリセンボンゲストの日ですが、あの2人はやっぱオーラがありますね。
春菜の声量や的確なツッコミはいつでも胸がすっとしますが、はるかも存在感ありますよ!
声量といえばバッファロー吾郎A。彼のおかげでストーリーを感じることができました。
YOUも色気あるし、的場浩司も相当かっこよかった。
山崎銀之丞もオーラありますね。あと生駒里奈ちゃんの運動神経に惚れ惚れしました。殺陣がすごい!
そして第2部の千重子歌謡ショー。
やっぱり以前より真面目路線になった気がします。
歌い方などで曲を茶化すことがぐっと減ったような?
そしてお待ちかねの御崎進登場!!
前にクドカンの舞台で藤井さんのお芝居を初めて見たのですが(「のんちゃんの舞台」)、倒れない?と思うほど全力で表現していて、汗がとにかくすごかったのを覚えてます。
今回もエネルギー全開でしたね〜。
「汗がすごい」と千重子にも心配されてた。
進は基本、お世話になった千重子に頭が上がらない尊敬モードなのに、なんの反動かちょいちょいマウント取るんですよね。
ただ千重子が人間できすぎてるので(笑)、「変な子」って思いながらも「進ちゃん」ってうまくなだめる → そこで「はっ!」と自分の非礼さに気づく汗だくの進 → タオルを渡す千重子 → 平身低頭の進 → デュエットへと気持ちを切り替える2人。
このバカバカしさに触れられるってなんて贅沢だろう…とうっとりするほどでした。
しかも2人で歌ったのが「ピンクのモーツァルト」
御崎進が「ちぇこさんっぽい」とセレクト。
※ 進は舌が長い時代の名残で、「ちえこ」と発音できないそうです(その後舌を短くする手術をしたそう。なんだかな)
藤井さんも歌がうまくてねぇ〜。
「す・い・しょ・ぉ・の…」という高い歌い出しにしびれました。
そうそう、藤井さんが登場してきたときに歌った曲がすごくかっこよかったんだけど、なんでも東京パフォーマンスドールの川村知砂って人の曲みたいです(シャドーダンサー)
知らねーってうっかり笑っちゃうけど、藤井さんがこのマイナー曲を知っていたという驚きというかマニアックさにもじわじわくる。
なんたって杏里の「気ままにREFLECTION」ですよ。
藤井さんが強烈で。
この曲をさっき聞いてみましたが超涼やか。あのデュエットの濃厚さはなんだったんだろう笑
進がはけたあとは再び千重子ショーで、明菜メドレーはもう嬉しかったですね。
「北ウイング」でまた声が伸びる伸びる。
そんでクライマックスが「タイタニック」と。
あの時はまさかタイタニック号が話題になるとは思わず、このシンクロにただ仰天です。
私の座席は花道の脇でしたが、千重子がその花道でセリーヌ・ディオンを歌っているというのに、千重子と倉たけし(ロバート秋山)主演の和製タイタニック上映に釘付けになっちゃいましたよね。
友近はますます歌が上手くなったように思ったし、本当の夢・目的は、こんなふうに腹から美声を響かせることなんだろうなと思ったほどです。
ちなみに家に帰ってからもじわじわきたのは、千重子の「スコッチがお好きでしょ」という曲にそっくりなのを石川さゆりちゃんも出したり、色々千重子に寄せてきてさぁ…とかボヤいてたこと。
「あれ?まただ」と思ったそう。いや、「また」って…
・大人計画「もうがまんできない」
こちらもWOWOWで見ました。
本公演の生配信。
コロナ禍中に無観客で演じたものの再演で、お笑い芸人役2人をはじめ配役に少し変更があります。
前作も映像で見たけど、今回のその2人が断然よかった…
そう、すごくよかったんですよ。
仲野太賀・永山絢斗。
ちなみに前回は柄本佑・要潤。
クドカンといえばイケメンをバカっぽく描くことでなぜか魅力を引き出す演出をしますが、柄本さんと要さんはまだ相当イケメンが残ってた印象。
これがドラマならイケメン要素はもっと消えてたかもですが、舞台だとお二人のスタイルの良さ(身長と顔の小ささ・足の長さなど)が目立っちゃってた気がします。
太賀さんと永山さんも相当イケてるはずなのに、見事に男前度が消えてましたよね。
特に永山さんですよ。クドカン作品でおなじみ。
「俺の家の話」とかでも「バカだなぁ〜」という愛らしさ100という感じで、ああいう俳優ってなかなかそうはいないですよね…
でも平岩紙さんとうっすら心が通じ合うとこではちゃんと男前度がよみがえるという(笑)
主役は阿部サダヲ。
阿部さんはやっぱりクドカン脚本でこそ引き出される輝きがあるなぁとつくづく思いました。
宮藤さんも役者に当てて本を書いてるだろうから、というのもあると思う。
中井千聖さんとかかわいかった。「一瞬松たか子に見える、ときもある」とか言われてましたね。
これも見終わったあとしばらく充実感に浸ってました。
そんで永山さんのことを書いておきたかった。
コメント