良い演技あれこれ
この間のEテレ「スイッチ」は録画して見ました。
ゲストは妻夫木聡×李相日監督
(写真はステラnetより)
映画「国宝」は私も観ましたから、国宝にまつわる裏話はとても気になる。
あの映画の一部だけでもTVで見るといまだに興奮しますね。
スイッチでの妻夫木くんの一言。
「良い演技ってなんでしょうね」
妻夫木くんは「国宝」にただならぬ思いを抱いてるように見えた。
特に吉沢亮の演技について「どうやってあの表情を引き出したのか?」というようなことを言っていた。
「良い演技」と思ったのだろうけど、口にしたそばから「良い演技」がわからなくなったようで。
「国宝」の吉沢亮には私も衝撃を受けました。
役者の方からのこういう衝撃って、数年に一度とかくらい。
何かを「超えた」と思ったんですよね。
なぜにあれほど孤独な表情ができるのか。
内側に秘めたその人ならではの個性からしか生まれないような。
うまい人はいる。
たった一つみたいな正解の演技をする人もいる。
でも良い演技ってそれとはちょっと違うような。
妻夫木くんこそ「あんぱん」の八木さんで良い演技されてますよね。
こういうキャラをこんなふうに演じる人になったのだなぁ…という深い感慨が湧くほど。
私は妻夫木くんについてはどれほどでも語れる!と言えるほど思いがたくさんある。
大体がいい人すぎるんだよな。
だからなんでも役を引き受けちゃうんだろうけど、もうやらなくていいよ!と思う情けない演技も全力でやってしまう。
宝くじCMのシナリオにはいつも怒りが溢れてくる。
ブッキーをあんな役にするなよ!
だけどそんな情けなさから人柄がこぼれ落ちるのが妻夫木くんであり・・
この間、NHKで放送していた「母を待つ里」は良いドラマだったなぁ。
それこそ中井貴一さんっていつでも本当に良い演技をされる。
これぞ良い演技!といつも思う。
プルーンのCMでも最近の珈琲屋マスターのCMでも。
また松嶋菜々子さんがいぃぃ演技だった・・
宮本信子さんの家でくつろぐ松嶋さんの大きな背中から思うに、本質は素朴で「くつろぐ」という言葉が似合う方なんじゃないか。
佐々木蔵之介さんも満島真之介さんも素晴らしかったけど、なんたって宮本信子さんですね。
凄みがあった。
津波で息子を亡くした母そのものだ…と思わせる凄み。
一人暮らしの老人の表情に「わかる」と思えてしまうのはなぜなのか。
物語自体は余白がとても多く一見地味なお話だけど、すごくすごく味わいが詰まってて、良いドラマを見たなぁと、数日経っても余韻が消えない。
NHKばっかりになるけど、今放送中の夜ドラ「いつか、無重力の宙で」
なぜか初回からイラつきを感じさせるドラマなんだけど、片山友希さんが本音(怒り)をあらわにするところで空気が変わった。
すごく惹きつけられたんですよね。
森田望智さんと言い合いになるところまで釘付けだった。
役者の持つ凄さってどんなドラマでもふいににじむことがあるんだよな〜あるある!ってことを感じるのが楽しいからドラマ見るのをやめられない。
そこに伊藤万理華さんも加わった今週。
この方は出るドラマに足跡を残すような不思議な印象の方。
人を惹きつけるのはかわいらしさ?色気?
いやいや、この人も相当うまいよと。
自分が楽しむことなんてずっと後回しのシングルマザーの表情が「わかる!」と思ってしまううまさ。
それは「器用」とかとはまた違うような。
主役の木竜さんは役が気の毒に思ってしまった。
最低な上司にNOも言えず嫌悪感も示せず搾取されまくりで、でも高校生のキラキラしたあのころを取り戻すのに必死で、疲れた日にはお酒も飲みすぎちゃう女子。
男性の幻想上の女子に思えるのが「なんだかな〜」と思ってしまう。
なぜその胸の内の声が柄本佑さんなのか。
木竜さんの声でいいじゃん。なぜに男性の声?
イラッとしてしまう。
・・・というドラマでも、各々の演技に胸打たれたりするのはなんだかんだ楽しい。
「しあわせな結婚」の松さんもさすがだなぁと思った。
最終回で特に思いましたよね。
強気で明るい役が続いてた気がするけど、ネルラみたいに地味志向の女性もそれっぽく演じられるのがすごい。しかもコミカルさも漂わせて。
あと最終回で、死んだ恋人の高騰していく絵が実はネルラ作だったというストーリーにはうなってしまった。
大石静先生!
おもしろいドラマにはちゃんとした脚本も必須ですよね。
この間の「べらぼう」も、林家正蔵さんの演技に泣けた・・という人は多かったと思う。
良い演技をするのはベテラン俳優とも舞台俳優とも限らない。
若手でも芸人でも心を掴む表現をする人っているんですよねー。
逆に芸歴や年齢がいってても何も感じない役者は少なくない。
世間的・作品的に「人気者」と思わせる活躍をしていても、見たくない・苦痛と感じる役者もいる。
何かがにじんでるということなのか。
うまいのと良い演技って、絶対違うと思う。
この間じっくり堪能した「北の国から」でも、心に残るのはとにかく竹下景子だった。
あのころたぶん20代半ばで、「ショック!!」という表情を何度アップで捉えられてたか。
ショックが雪子に降りかかりすぎという話もあるんだけど、いろんなパターンのショック・傷つきの表情を見るのは楽しかったなぁ。
熊谷美由紀(松田美由紀)も、あれは演技完成されてると言えないのかもだけど、表情が良かったんですよ〜(ぐすん)
もう泣いちゃうほど。
なぜ泣けたんだかわからない。
愛おしさが、ただかき立てられた。
最近は不穏な感情に自分で疲れてしまうので、良質とわかってるもの(NHKか好きな脚本家のもの)しか見なくなった。
2年くらい前までは新ドラマの1話を大体ほとんど見て、視聴継続を決めるなんてことやってたのに、1話で「無理」と思うドラマが増えた。単に1時間も見る体力のなさかもしれない。
少し前にXで、「ちゃんとドラマを見る人なんていないんだから作る側もそれ相応で良い」みたいなドラマ製作者がいて…という記事を見かけて、「やっぱな」と思った。
ひどすぎる!と憤慨するドラマって、熱量がそういうことなのかな。
ドラマだけじゃなく、映画も勇気持って2時間半をかけて「なんなんだ」と思うことが多い。
だからもう怖くて見なくなっちゃって。時間のロスが怖い。
来週の「スイッチ」は妻夫木くんが掘り下げられる。
楽しみだな。
妻夫木くんは昭和の良さを醸し出すぎりぎりの世代だと思う。
(そういうあたりが好きなんだな)
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