舞台・映画・本等感想文
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映画「新聞記者」
「新聞記者」見に行ってきました。
今、日本アカデミー賞受賞記念として再上映してるところいくつかあるようですね。

主役のシム・ウンギョンさん。
孤軍奮闘の新聞記者役です。

松坂桃李さんは内閣情報調査室の官僚役。
この杉原に本当胸を打たれました。

恋愛要素1ミリもないのに、この2人が目を合わせるシーンではドキドキするほどの何か色気?放たれてました。
ストーリーが緊張感にあふれているので、ずっとドキドキしてましたが。
この映画はとても深刻なのです。
深刻なメッセージや訴えをはらんだ映画。
松坂桃李さんもスピーチやパンフレットで言ってたけど、よくこれを世に出せたなと。
だって、TVSの性犯罪記者とか。TVSって!
映画は、東京新聞・望月衣塑子記者の「新聞記者」という著書が原作。
ということは、映画の中で勇気出して告発の記者会見をしたあの女性は、伊藤詩織さんであるはずで。
彼女をずっと取材している望月さんです。
彼女を貶めるツイートが出回るシーンがありましたが、政府系に楯突くと今どんな目にあうかわからない。
誇張がある表現としても、「やっぱそうだったんだ」と思える「上」のなりふり構わなさはもうこんなにも庶民にバレていて。
そして大学新設の認可問題といえば、あれでしょ!?と。
映画の核心部分のこと、私はとある月刊誌で数年前に触れました。
家帰ってネットで調べたら、「あの映画はフィクションだから!」「そんなわけないでしょ!」と、笑い飛ばすような記事が目につく。
いやいや、でも私は目にしたんだ、月刊誌の記事が心にずっと残ってた。
母親と「あそこ認可したらまずいって!」と話してたんだもん。
そして現政権が何をしたがっているか。今もウイルスの騒ぎに便乗して何を強引に進めようとしているか。
全てはやっぱり「そこ」なんじゃないかと、道が一本つながってしまうそのヤバさが決定的絶望として実現しないよう、この映画を世に出したんじゃないか…。
制作スタッフの緊張張り詰めた深刻さ、そう受け止めたのは大げさなことじゃないはずです。またとても理解しやすい映画です。
むしろ誰でもわかるように(誰も彼もに見てもらうために)、セリフや展開をシンプルにしてくれてるんじゃないかと感じました。
「ヤバイじゃん」「ヤバイよ」
こんな会話が直ちに繰り広げられないとまずい。
たとえ胸の中の1人問答でも。そしてなぜ主役に韓国人のシム・ウンギョンさんを抜擢したか。
ここにまた、この映画の本気度が感じられる気がする。日本の女優だと表現できる方いないかもしれないと率直に思うし、スポンサーとかいろいろ…もう本当にこの国は自由に見えてかなり表現の自由が狭まってるとつくづく思う。
そうすると松坂桃李さんや、松坂さんを送り出した事務所ってすごいな…とかそんなことまで思っちゃいます。
あとシム・ウンギョンさん演じた吉岡エリカの同僚役、岡山天音さんがすごいよかったです。
上司役の北村有起哉さんはもう最優秀助演男優賞でしょうと思う。
田中哲司さんも相当怖かった。私はこの週末、仕事関係で息も浅くなるようなショックを受けた。
松坂桃李さんはこの映画の中で何度も呼吸が浅く・荒くなる表現をされてましたが、人は本当に「信じられない」と思った時、鼓動が狂うほどになるのだ…と思ったら泣けてきたりしました。
職場で一度でも「信じられない」とショックを受けたことがある人なら、自分を重ね合わせたくなるシーンがあると思います。
仕事ってなんでしょうね。
私はすべての仕事は「相手」を感じるものと思ってます。
形はどうであれ、「お届けしました」と胸張って誰かに手渡すようなもの。
この世を豊かにするための制作者、私たちはその1人なのかなって。でももし同じ職場で「お届け先」が違う人が混在していたら。
上か横か、もしくは意図しない方向。
この「意図しない方向」というのが一番苦しいでしょうね。
大抵は「横」なんじゃないですかね。
それが「上」でしかなかったり、「自分」の人が大半だったらば…。例えば部や室や課の方向性が「上」だったら、意図しなくてもそこに従わないと生活はしていけない。
特に国や政府に近い人ほど。
「知らなくていいコト」でも、政治家秘書の葛藤の回がありました。
生活していけないなんてこと、めったにないと思いたい。
でも現に不可思議な報道を目にすると、今はやっぱりそうなのかな。私ですら。
意図しない方向にエネルギーを注ぐのがもうとてもしんどい。
注ぐとかでもなく「注がない」という後ろ向きスタンスで働くことはしたくないのに、注力するほど冷ややかさを感じるばかり。
シム・ウンギョンさん演じる吉岡エリカも、同僚から「変なやつ」と言われたり、「ここまでだ」とストップをかけられる。
提供すべき相手はこっち!とわかっているのに、曲げられるのです。
森達也さんのドキュメンタリー映画「i ー新聞記者ドキュメントー」でも、望月さんがまさにそこにぶち当たってました。新聞記者だから・官僚だから自分と全く違うとは思えなかった。
とても「自分のこと」として見れた、本当にそれくらいわかりやすく「今」の危機感が表現されてます。
この松坂さん演じる杉原のような人が、本当に存在するかどうかは疑わしい。
でもいてほしい・いるはずという「良心」として生まれた役に思えました。
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パラサイト 半地下の家族
昨日は映画「パラサイト 半地下の家族」を見に行ってました。
「ネタバレ厳禁」のお願いつきの映画って最近増えましたね。
「パラサイト」はまだ上映してるので私も注意しますが、ある程度のネタバレは後半に書くこととして、私なりのしょうもない感想を書いてみます。
(グロがあるかないかも下の方に書きます)まず格差は顔にも出るわけ?というのが最初の印象。
韓国では映画のような半地下生活は現実としてあり、主役はその家族。いわば貧困層。
その家族が富裕層と関わる物語ですが、顔つきがもう違う。
富裕層は整形する金もあるから?と思ったのですが、あれは映画的な誇張なのでしょうか。
韓国はドラマも映画も日本よりずっとスケールが大きくすばらしい作品が多いですが、主役級の整形っぽさと、主役級じゃない人とのキャラの差はやっぱり気になるところではあります。それでもパラサイトは、イケメンを主役に据えてないっていうのがいいですね。
いや、半地下家族の息子・ギウだって、東方神起の中にいても不思議じゃないのかもしれません。
このギウ役のチェ・ウシクさんは牡羊座の29歳です。娘役のギジョンがまたすんごい魅力的です。
最初こそ幼い印象でしたが、どんどん魅力や迫力が溢れてくる。このWi-Fi電波探るシーンがどれだけ平和で可愛らしかったか…と切なくなります。
ギジョン役のパク・ソダムさんは、ベリーショート時代が剛力彩芽さんに似ています。もし日本版あるとしたら、ギジョンは剛力彩芽さんで決定。
同じ乙女座だし、こういう毒のある役のほうが剛力さんをより輝かせるんじゃないでしょうかね。
富裕層への存分の毒吐きを期待します。これまたギウの友人・ミニョク役の男性が東出昌大さんに似てたのです。
パク・ソジュンさん。
「日本でも絶大な人気」と言われている方。

西島隆弘さんにも似てますが、ここは東出さんに枠を譲ってほしいものです。富裕層家族の妻がまたむちゃくちゃ美人。
これは日本で誰だろう?というレベルではありません。
こういう演技力であんなに体当たりな姿もさらけ出し、どの角度からも美しいなんて、ちょっといないのではと思ってしまう。
体当たりというのは、まぁまぁまぐわってるということですが、日本だとそこまでできる女優さんは限られてるような。
なんでも蒼井優さんにお願いするわけにいきません。
木村多江さんだと無邪気さに欠けるし…。
なぜか日本の女優さんは幼さが目立つように思うんですよね。
どうしても「万引き家族」と重ねてしまいますが、日本だと安藤サクラさんくらいじゃないですかね、メジャーな女優さんでアダルティーな体当たり演技できる方。
尾野真千子さんも良さそうですが、セレブなのにドスがきいちゃいそうです。
チョ・ヨジョンさんはなんと39歳。水瓶座です。そして富裕層の夫役がこれがまた…。
韓国のセレブって本当にこういう人たち??

この方の日本版は原田龍二さんか谷原章介さんか迷うところです。
車の中で○×△…というセリフがあるので、やっぱ原田龍二さんかな。
イ・ソンギュンさんは魚座です。
韓国でも隣星座で家族役なんだと嬉しくなりました。主役は半地下家族父役のソン・ガンホさんなのです。

この方は超名優なのですね。
私は本当にそういうのが疎くって…。
しかししょーもない父ちゃんだったこの方の演技に確実に惹きつけられる。
アハ体験のように表情がいつの間にか変わってます。
前どんな顔で暮らしてたっけ?ということが思い出せないほど。
コメディもシリアスもホラーもできる方なのでしょうね。
ソン・ガンホさん山羊座。
やっぱり本来まとも路線だからこそ、そこからガクッと外れたような演技ができるのかな。ソン・ガンホさんの妻役、チャン・ヘジンさんが同い年というのが衝撃です。
この方は乙女座。
ポン・ジュノ監督も乙女座で、セレブ夫婦の娘・ダヘも乙女座。
乙女座がすごい関わってる映画です。
やっぱり上り詰めていく者への辛辣な視線・羨望の裏の憎悪は乙女座が演じるとぴったりはまるんでしょうかね。
ダヘはセレブなのですが、なぜかいつもぶーたれてます。
まだ小さい弟に親の愛が集中してるように感じられるからでしょうか。
その弟役のダソン10歳は蠍座でした。
ダヘ役は乃木坂の誰かから選出されそうです。でも濃厚なキスシーンもできなければなりません。この半地下母役の方も、前半どんな格好で表情だっけ?と思い出せなくなるほど変化します。
韓国では女性が圧倒的に強くて賢いのでしょうか。
そんな賢さに男性も惚れ込んでいる…という情景は、日本でもなぜか貧困ものでしか見かけない気がします。
「万引き家族」もそうだし。
このドラマに欠かせないのは家政婦です。
ムングァンは水瓶座。セレブ夫婦と星が近くてやっぱ同居人的?
この家政婦vs半地下家族のあれこれは笑えました。
でもこれ、日本じゃやれないんじゃないですかね。
ひどっ!わりぃな〜ってあたりが笑えちゃうんですよね。
でもここで笑った自分にも罰が下っただろうか…と思うほど後半、家政婦にいろんなものを見せられます。ここからはちょっとネタバレ。
ムングァンが北朝鮮女キャスターのモノマネをしたところはかなり興味深いシーンでした。
そりゃ可笑しいけれど、韓国人にとってあれはカジュアルなギャグ?と、それとも「引くわ〜」というとこなのか、わからないんだけどとにかくすごかった。
日本じゃお目にかかれないとても面白いシーン。あと、私は極度にグロ苦手なので、そんな私からしたらグロいシーンは確実にあると言えます。
とあるとこからしばらく薄目状態で、スクリーン底部の字幕しか目に入らないようにしつつ片耳も塞いでた。おかげで超重要なところを見逃してしまいました(あとから人に聞いて理解する)
ここからグロ!ということはわかりやすいので心の準備はできそうです。
今の映画は目に入る映像より音の方がリアルってこともありますね。
頭蓋骨が相当硬いものに当たる音はまたリアルで不気味でした。韓国の貧困層と富裕層の差とか、あるんだろうなとは思ってもどういう感じとかの想像は及ばなかった。
それをこの映画ではすごくわかりやすく描かれている。
富裕層の家から半地下の家に徒歩で戻るには、階段を何段も降りていかなければならない。
まだずっとこれでもかと思うほど下へ下へ。
そのシーンはなぜかとても美しかったのです。
でもそれも途中まで。
ポン・ジュノ監督は「水」を印象的に描くと言われてるそうですが、形のない水が場所によってこうも変化するかというあたりの見せ方は、なんにつけ疎い私にもよくわかった。それでもここが私の生活場所…というようにギジョンがタバコを吸うシーンは本当にかっこよかった!
賢いのもたくましいのも、本当は「持たざるほう」かもしれない。
なのにね、優先順位はずっとあと。「パラサイト」を見てる間じゅう、何度も書いている「マウンティング」がどうも思考に絡んできました。
相手が自分を上回ってきそうなとき、上回ってきたと感じたとき、みくびってた思惑が外れたとき、人は人を嫌うのかもしれない。
おちょくることで対面を保ち、優位に立った気になっといて絶望を刺激されれば憎しみが一気に増殖もする。
セレブだからってオール勝利というわけじゃない。
それぞれ何か弱点を抱えてるから、目に見えない力関係は一層複雑になる。
そんな人ばっかりじゃないはずだけど、私はそんな感情を映画の中に重ねました。(写真・動画はパラサイトのHPより)
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飲酒・断酒日記を読む年末
クリスマスを越えてなんとなく気分が沈んでます。
せっかく書いた年賀状の半分に間違いを発見したからというのもあります。
この間見に行った大人計画の舞台「キレイ」は観るのにとてもエネルギーが要るもので、その疲れが残ってるということもある。
またなぜか今頃、美奈子と新夫の「ノンフィクション」をYouTubeで見てさらに疲れ・・
あと生理痛、そして新月。そうでした。今日は山羊座の新月、しかも日食です。
新月前に気持ちが落ち込む人は多いのですが、私も久々ハマった気がしました。
不安や不満、ネガティブなことばかりなぜか頭に浮かぶ。
周りでもそういう人は多い。
私はフラワーレメディーをよく使用します。
ネガティブが頭から離れないときは「ホワイトチェストナット」を1滴含む。
気の持ち方や誰かの優しさだけじゃ乗り切れないことってあるものだし…。
心の助けになるものは、取り入れるべきと思うのです。そういう弱った時って、ついお酒も飲みたくなっちゃうんですよね。
私は数週間・数ヶ月飲まないこともあるけど、週に2回飲んでしまうと、それが週3回になったり、缶チューハイを2日に分けて結局4日連続…ということもある。(量は全然飲めない)
気分はいっとき爽快になっても、体に負担かかってることははっきり感じます。
だからまたやめようとするのだけど…。
でも酩酊するほど飲んだことはない。
その域はやっぱ怖い。その恐怖心は相当のブレーキになっています。酔っ払いは大嫌いなのに、お酒でボロボロになる人にすごく関心が強い。なんでだろう。
今、お酒にまつわる本を3冊同時に読んでいて、さらにもう1冊控えています。中島らも「今夜、すべてのバーで」「砂をつかんで立ち上がれ」
吾妻ひでお「アル中病棟」
町田康「しらふで生きる」漫画家の吾妻さんはこの10月に亡くなりましたね。
それが私の「酒」「酩酊」への強い関心のきっかけでもあります。

この「アル中病棟」は明るさとおおらかさが特徴的ですが、さらっと壮絶さや異常性が描かれてるので、最近の気持ちの重さと無縁じゃなさそうです。
というか、気持ちが沈むからさらに沈んでいく本を選ぶのか、それとも本を読むから気持ちが沈んでいくのか、どっちが本当か自分でもよくわかりません。そして中島らもさん。
大槻ケンヂさんが敬愛する方というのは知っていたけれど、本を読むのは初めてでした。
それがこの間本屋で手に取って、開いた第1ページ目・出だしにすぐ惹かれた。
町田康さんもそうだけど、本の出だしって圧倒的な決定打となります。
らもさんの「今夜、すべてのバーで」は、タイトルもかっこいい。
「砂をつかんで立ち上がれ」も、3冊読みかけているというのにたまらず買ってしまった。町田康さんといえば独特の語り・文体です。
小頭がよくて自分を勝ち組って信じて酒も飲まないような奴ってよく見ると猿に似てるよね、とか、
(「しらふで生きる」より)「それってさあ、酒を飲むくらいしか楽しみのない人生の敗残者の負け惜しみじゃないの」と口を曲げて言う人が天現寺、或いは三宿あたりにいるかもしれない。(中略)しかし今度は神保町とかから人が来て、「いやさ、君は無学なパンク上がりだから知らんだろうが、大伴旅人は・・
(「しらふで生きる」より)町田さんの本は地名がわかりやすく事態と対応してるのが楽しいです。
町田さんのこの本を読んでとても共感したのは、「人生にはすべて陰と陽がある・プラスがあればマイナスがある」と書かれているところ。
町田さんはアル中とかになる手前で断酒された方ですが、お酒をやめた本当の理由は自分でもよくわからないとしながらも、このプラス・マイナスのあたりにひとつゆえんがあるようでした。
お酒を飲んでる時が漠然と「楽しく良い時間」であるならば、そうじゃない時間もあるはずで。
お酒でプラスを味わった分のマイナス。
それって何かなぁ…と、今日J-WAVEでも語られてました。でも吐くまで飲む心理ってやっぱりわかんないですね。
あと飲ませる心理。「吐くまで飲めよ」という命令がまかり通る社会、それを受け入れる部下とか店とか、本当に不思議。本当に嫌悪感。
でも嫌悪を通り越して、どうしてそういうことになるのだろうかと、やっぱりいつでもお酒の魔力への関心が尽きないのです。父親がお酒とタバコと借金で寿命を縮めた人で、父もアル中にはなりませんでしたが元来怒るかボーッとしてるかの人で、「よくわからない人」「どうしてそうなるんだろう?」という果たせない追求心があちこちに向けられているのか、それとも酒を通して父を感じたいのか。
ここは自分でもよくわかりませんが、人の中毒性には関心がある。
星で言えば「海王星」の管轄ですかね。
占いやってるのも海王星的と言えるのだし。
今P海王星とN太陽土星がオポジション。
「堕落」の世界がまた気になりますね。
つげ義春さんも堕落の色が濃厚だったし、父はいっとき商社の部長にまでなったのに、深夜の警備員をやるような時期もありました。
もちろん警備員が堕落という意味ではなく、ずっと部長の椅子に座ってられたはずの父が深夜寒い中に立ち、年下の従業員に使い物にならねぇ怒られ…という人生は想像してなかっただろうから。
バブル期を経験した人の振幅の激しさを見た体験はやっぱり大きいのかも。
でもバブルはじけたあと、こういう人はわんさか発生したのでしょうね。ほっとくと人は必ず堕落するのでしょうか。
でもほっとくと人はずっと「普通」にとどまるんじゃないかと思うのです。
しかも「みんなと一緒の普通」
いっつもうまいこと多数派の中で漂える自分。
堕落への一歩は、「ここから外れよう」というかなり意図的なものと感じます。
上昇方面への一歩は難儀でチャレンジングなことだから、相当の熱意とか使命感が必要。
私自身も、「ここから外れよう」という意識がかなり強い自覚はある。
外れる一歩は上だろうが下だろうがさほど変わらない。
「ただ外れる」
多くの人にもそんな願望はあるはずで、それがお酒なんじゃないのかな。
ただ普通の人は「みんなとお酒飲んでいる」というまたも多数派の中で安住して。
一億総不良願望社会。
それを手っ取り早く満たしてくれるのもお酒。
そうじゃなければ街にあんなに汚物は落ちてないだろうし。
「やっちまった」って嬉しそうにしてる人が大嫌いだったけど、やっぱりその範囲を大きく逸脱するアル中体験談には惹かれるものがあるんですよねー‥。しかし本を読むと、父がアル中じゃなくて本当に良かったと思う。
アル中患者が家族にいる方には申し訳ないけれど、本当にあの壮絶さは本人もそうだろうけど家族も相当つらいと思う。離婚しない方が本当に偉い。吾妻ひでおさんの漫画を読んでると、本当にみんな断酒できなくてお酒が好きで、でも体はボロボロ。
精神疾患とも位置づけられ、病院の面談で幼少期からのヒアリングをされたりとか、本当に医療機関と根気よく治療を続けないと意志だけじゃ治らないものなのですね。
多くが社会的な挫折を感じたり、お酒じゃなきゃ埋められない空洞。それはさみしさでもあるのかな。
病院ではその穴をお酒以外のもので埋めましょうと、それを考えるミーティングなども開かれていた。
みんな空洞部分ってありますよね。
お酒飲まないからって空洞が埋まってるとも限らない。
私にとってもお酒は暇つぶしのところがあります。
でもハマる=中毒ってやっぱりそんなに不健全で悪いことなのかな。
誰かに迷惑かけることはあるだろうけど、その域まで行かないと得られない・感じられない世界の良さもある気がして。
安住ラインにさらっとずっといることが果たしてそんなに偉いかね?という反発はずっとあって、それが具体化しないように恐れつつ期待しつつ…。 -
辛酸なめ子ワールド
今とても興奮しています。
正確に言うと、ここのところの通勤時間・地下鉄内での興奮。
辛酸なめ子さんの本を2冊Kindleで買って、1冊はまだ読み終えてないのですが溢れるものを抑えきれず、こうして書き始めちゃってます。1冊は、なめ子さんが「池松江美」というご本名で出された著書「男性不信」(2003年)
もう1冊は、なめ子さんが評判になるきっかけの日記風ブログ3年分がまとめられた「自立日記」(2002年)
「自立日記」は今読んでる途中です。「男性不信」はずっと買おうかどうか迷ってました。
なぜ本名?そしてこのタイトル。
なめ子さんにしては深刻に思えるようなムード。
Amazonの口コミがまた複雑で、読者もどう捉えたらいいか明らかに惑ってるふう。
でもこのたび、何の星の後押しかわかりませんが購入してみました。
こ、これは・・・!最初に抱いた印象は、会田誠さんの「青春と変態」に次ぐヤバさ。
衝撃度合いがこのときとほぼ似ています
「青春と変態」では高校生の会田誠くんが登場しますが、「男性不信」の主人公は「虫酸ラン子」という、限りなく辛酸なめ子さんに近いライター。
「これ事実だったら相当やばいよね」「でも、んなわけないか」「でも…」
このあたりの「本当かもしれない」スリル感をずーっと抱かせるところがお二人の文才・才能ということなんでしょうけれど、イマドキの若者みたいに感動もなんもかも包含した「ヤバい!」を、地下鉄降りてすぐ叫びたくなるようなこの数日間です。Amazonの口コミでは「著者の闇の深さを感じます…」とか「これ、ギャグですよね…?」とか。
みんな戸惑ってるんですよ。それはわかる。
でもそういう問いを投げかけることが無意味に思えてくる。
内容は、「素のなめ子さん(ラン子)による男性憎悪記」といったところ。
中高とお嬢様進学校に通って男性免疫などなく過ごしてきたけれど、男性への興味はそのまま憎悪になってしまう。
女を外見で選ぶ男。自分を見てがっかりする感慨をわざわざ表情に浮かべる男。
自分など存在しないかのように見もしない男。
そして目が合っただけで「オレに気がある…」と勘違いして近寄ってくる男。
どうして私の周りにはこんな男ばっかり…。
でも「古事記」を読み返したなら、古代の神々も結局「美しき」見た目に狂わされていて、ならば仕方ないか…と時に反省。
しかし、そんなラン子にも男性とのふれあいの日々が待っていて…!
というようなお話。男性への憎悪・嫌悪の表現がたまんない。その他各種disりにゾクゾク。
事実かどうかそれ以前に「おもしろい」、ただそれに尽きます。この読後の感動の勢いで「自立日記」購入にも至りました。
これがまた…!なめ子さんのベースがここに詰まっています。
今でこそなめ子さんは、すべての言葉がギャグに聞こえながらもノーブルな雰囲気を放つ特異なお方ですが、25歳前後のこの日記は若い女子特有の拗ねた目線がなんとも切なくて、笑わせようとしてない(たぶん)文章にも文学的なセンスがみなぎってます。
こんなふうに思い切り吐露する日記、私もやってみたい!と思うものの、なめ子さんが特異性を確立されているのは、なんといってもその知性。難しいフランスの書籍や映画にとても詳しくて、あと宇宙のこととかスピリチュアル、お化粧品、海外セレブなどなど、ツッコミどころ満載であっても実はスキがない。
だからマウンティング文化人などからも敵視されないんだろうなぁと納得。
私の目にはそう見えるけど、ご本人はあちこちで風当たりを感じられてるかもしれません。
しょっちゅう悪い気に憑依されちゃうようで体調悪いことも多そうで。「自立日記」を読むと25歳ごろのなめ子さん、すでにライターや漫画家としてご活躍されてるようなんですよね。
でも目黒のロイホにはカプチーノとかおしゃれ飲み物があったのに、蕨市のロイホには紅茶やコーヒーなど最低限な飲み物しかないことに憤慨する浦和在住のなめ子さん。
英会話教室に通ってアメリカ人の講師に毎度オーバーリアクションを求められ、「アメリカは大きな自己啓発セミナーであると確信」したりとか…。
とにかく「洗脳」というワードがたくさん出てくるのがいいですね(笑)
自分自身これまでどれだけひねくれ思考だったのか、それはもしかして恥じたり反省することでもなく「普通」だったのではないか。もしや「宝」にもなるのでは…。
誰かの日記ってそういうパワーがあるんだなと感じたりもしました。あと会田誠さんも何度か登場して、すでにこの頃から一緒にお仕事したり食事をしたりしてたみたい。
「レディにこんなことを言うなんて!」と憤慨するなめ子さん、「こんなことを言う」会田さんの描写は貴重です。なめ子さんといえば最近占星術やタロットも勉強されているようで、松村潔さんとの共著「人間関係占星術」も出されています。


以前、サインもらっちゃったんですよ!
なめ子さんのサインはいつもイラストも描いてくれます。またSPEED大好きなめ子さんですが、本当に好きなんだかどうだかのつぶやきが散りばめられてて、それこそがリアル。
ファンといっても全肯定ってわけでもなく、冷静に見てたりしますよね。
ヒロコとヒトエの生き様とか…。
なめ子さんは月が山羊なので、貞淑そうな雰囲気には納得です。
あとそれなりの厳しさがないとああいう表現できないでしょうね。
視点はキツいんだけど、言葉(水星)にすると木星効果で「なんだかな」ってボケ味になる。
人を「え?」と思わせるヤバさと油断させない知的なシャープさ、コツコツ重ねてきた実績(山羊)、それが辛酸なめ子さんなのだなぁ。 -
「キンキーブーツ」
友人に誘われて、ミュージカル「キンキーブーツ」を見に行ってきました。


チケットは友人が先行で取ってくれたS席。とはいっても後ろの方の席でした。
でも一般発売は5分で完売したとのこと。
いやぁぁそうでしょうね。だって本当に素晴らしい舞台だった…!「三浦春馬すごっ!」
このことを友人に耳打ちしたかったのをぐっとこらえて、休憩時間。
「すごいぃぃぃ…」と即、友人に伝えた。
友人も「すごいねぇぇ」と、共感し合える喜び。誰の歌声もバシッと迫力あってまっすぐで聞き取りやすく、リズミカルな舞台移動も楽しい。
そして三浦春馬さん演じるローラが登場したインパクトにドキュンと一瞬で胸打たれました。
楽しい!素敵すぎる!
三浦春馬さんの歌声や声量もすごいけど、ダンスやドラァグクイーンとしての所作が素晴らしすぎる!
ただの女装じゃない。ドラァグクイーンなのです。ストーリーは、とってもシンプルでわかりやすかったです。
小池徹平さん演じる靴屋の息子・チャーリーが、父とは違う道を歩もうとしていたのに、その父の急死で止むを得ず靴屋の2代目になることに。
ところが経営は芳しくなく、ピンチに陥りかけていた。あるときチンピラに絡まれそうになっていた三浦春馬さん演じるドラァグクイーンのローラを助けたチャーリーは、そのローラの履いてた靴のヒールを修繕することをきっかけに、「男でも女でもない人の靴」というニッチなところに目をつけ、その路線を追求することで経営上向きのチャンスを掴む。
そのチャンスの一つがミラノでのファッションショー。
だけどそのショーに気合いが入りすぎるチャーリーは、従業員から愛想をつかされ、ローラを傷つける言葉を吐いてしまう。ショーでのモデル役を務めることになったローラは、ミラノへの出発前になっても空港に現れず、チャーリーがモデル役を引き受けるものの、長ブーツなど履き慣れないからウォーキングもボロボロで…。
小池徹平さんもブーツを履いてたのはそういうわけなんですね。


三浦春馬さんという方は不思議な方で、ドラマでは朴訥とした真面目教師役からセクシーで女慣れしている役、そして童貞役など、その役柄は実に幅広い。
NHKの「世界はほしいモノにあふれている」も、時々流す程度にしか見てなかったですが、いつでもJUJUさんの印象ばかりが残って、三浦春馬さんといえばあの色白で穏やかな笑顔しか印象になかったのです。
それが今回のローラというドラァグクイーンの役。
もうなんっって華やかなんでしょうと、その所作もセリフもまた説得力あるし…。劇中ではローラが普通の男性用スーツ姿になる場面がありますが、もうよく見知ってる三浦春馬さん。
さっきまでのオーラはどこに!??というくらい朴訥さをまとうのです。
そりゃイケメンです。それは遠くからでもよくわかる。三浦さんはそういえば「性」がテーマとなる作品にも多く出られてるのです。
「わたしを離さないで」では、綾瀬はるかさんとのベッドシーンが印象的でした。
「肉体」もまた、華やかに人の目に触れるんでしょうかね。
「キンキーブーツ」でも、ボクサー姿の上半身裸姿を拝めました。
背中や肩の筋肉がものすごかったです!
またピンヒールの靴でずっと踊りっぱなしなのです。小池徹平さんがまた、私の遠い席からでもイケメンぶりがよくわかりました。
いいとこの坊ちゃん役がお似合いで、小池徹平さん自身が確かに品のある方なんでしょうね。私は三浦春馬さんを見て、この役をやるためにまるで生まれてきたみたい、とまで思いましたが、小池徹平さんもソロでスポットライト浴びる歌唱シーンがむちゃくちゃかっこよかったのです。
外国人という役がぴったりで、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のマーティー役も合うんじゃないかと思ったりしました。
小池徹平さんがなんとか慣れないブーツを履いてランウェイに立ち、もうダメだ〜ってコケたところで三浦春馬さん登場。
このシーン以降涙が滲みっぱなしでしたよ…。あと小池徹平さんのいずれ恋人になるソニンさんもキュートでした。
金髪のカツラつけてましたが、セリフの言い回しといい、大仰なズッコケといい、本当に外国人っぽかったです。
男性陣に負けじの表現がとても楽しかった。
あんなにコメディエンヌなところを見せてくれるなんて。
小池さんの最初の恋人役・玉置成実さんの歌声も素敵だったし、もうみんなみんなすばらしかったです。
ミュージカルってお手頃ではないけれど、あの華やかさや連係を思うとなんとも贅沢な娯楽。
本当に素敵なものを見たという感想しかないです。そしてこの舞台の大きなテーマが、「相手のありのままを受け入れる」
昨今、ゲイや女装をする男性の物語が増えましたよね。
2019年というか令和は、そのあたりのボーダーレス化が一つの大きなテーマになるのでしょうね。
こういう物語で描かれる「わかり合い」のところっていつもとっても優しい。
でも本当はどうなんだろう。それはいつも気になるところです。
舞台ではそのあたり、ただ優しいだけで始まって終わるわけじゃなかった。偏見が嫌で嫌で町を飛び出したローラ。
でももう一度その偏見の中に入って、ありのままの自分を表現するローラ。
最初はとてもものわかりのよいチャーリー。
だけどこだわりの強さは、差異の排除や否定を浮き彫りにする。
ローラを奇異の目で見ていた従業員たちは、「ありのままを受け入れる」、それなら自分たちにとって何も難しいことじゃないと気づき、そして自分次第でいろんなことが変わっていく。最後の全員でのダンスシーンでは、涙がにじんでしょうがなかったです。
でも涙を拭くよりも手拍子をしてたかった。「キンキーブーツ」は元々は映画で、海外でミュージカル化され、それの日本版だそうで。
その日本版の台本は岸谷五朗さんが手がけられてるんですよね。
だからなのか全体的にとってもユーモアあふれてました。
なんたってセリフがわかりやすかった。
舞台はちょっとでもセリフ聞き取れないとよくわからなくなっちゃうのですが、みんなものすごく滑舌がよかったです。
なんと音楽をシンディ・ローパーが手がけられてるというね、ここも見どころです。総スタンディングオベーションなんて初体験です。
客席が明るくなって退出のアナウンスが流れてもまだ止まらない拍手。いやもうすごかった。
でも大変なんですよ。
明日は岡村ちゃんライブなのです。
春馬が上書きされてしまうのか、それとも春馬が明日も心に居座るか…。
いかんいかん!!
明日は明日で明日のことを楽しんでこようと思います。
でも今晩の夢には春馬・ローラが出てきてほしい。
いや、春馬の状態で!!動画だけでもすごいけど、実際の魅力はこの100倍。
三浦春馬さんは初演時にいくつか賞を取られたそうです。
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カメ止めと濱津さん
「カメラを止めるな!」の録画を最近やっと見ました。
おもしろかった!!
もう2回見ちゃいました。
3回目、再生しちゃいそうです。「何度も見たくなる」というのが私にとっての名作になるわけですが、カメ止めがそんな映画になるとは…。
映画が始まる前の生放送部分で出演者が「初めの37分…」と言ってたので、ゾンビ部分は37分で終わるのだなとホッとしながら見れたのはよかったです。
私はホラーやグロさが苦手なので、そこだけ我慢すればいいんだと思えた。「もう一回あそこ見たい!」
と思える箇所がたくさんある作品です。
いろんな人の感想や、作品作りの裏話などを読んで「気づいてなかった!」というところを確認したくなるし、1回目だと完全に存在が薄かった出演者が、2回目でものすごく存在感放ってたりするのに気づくのも楽しい。
「もしやこの俳優さん、すごく人気者になるのでは…」
そう思える役者さんもたくさんいました。
なんかいろんな奇跡詰まってるのです。そしてなんといっても「もう一回見たい!」という衝動を抱かせたのが、主演・濱津隆之さんの表情です。
物語冒頭でイカれてた監督「日暮」(ひぐらし)を演じた濱津さん。
J:COMのCMで「映画だよっっ!」ってキレるあの方。
あのキレっぷりも、映画見る前からなんだか病みつきになるなぁと思ってたのですが、映画では濱津さんの顔のアップが多く、その一つ一つを味わいたくなるのです。
まだ何度も確かめたい。
そういう俳優さんがほかに何人もいました。映画公開中は、見た人にネタバレ厳禁の暗黙ルールが敷かれてたようですが、その甲斐あってなのか、私の耳にもピンとくるほどの何も届きませんでした。
「カメラの揺れで酔うかも」という情報がありましたが、TVだと全然大丈夫でした。
ただ吐瀉シーンは心の準備が必要かもですね。(目というより耳)
私もこれ以上は内容について細かく書かないようにします。
見た人には「そうそう!」ってわかってもらえればいいのだし、見てない方には「見てみようかな」と思ってもらえたら何よりです。この映画に出られてた方はほぼ皆さん無名ということで、主要な3名、濱津さん、濱津さんの妻役のしゅはまはるみさん、娘役の真魚さんは大ヒット後に事務所が決まったようです。
しゅはまさんはエイベックス・マネジメント、真魚さんはワタナベエンターテインメントということで、やっぱりそうですよねぇ〜と思います。
人の心を揺さぶる演技だったのです。
濱津さんも今年に入ってからやっと事務所が決まったようですね。濱津さんのいろんなインタビューなどを読みましたが、普段は本当におとなしい方のようで。
芸人を目指してNSCに入ったり、音楽が好きだからとDJもされたそうですが、共演者によると元芸人とは思えないほど無口とのこと。
その他エピソードとしては、去年までラブホテルの風呂場清掃のアルバイトをしていたとか、お母様と二人暮らしとか、毎朝ちゃんと8時に目覚ましかけて起きてるとか。
風貌からはテレ東に出てきそうなマイナー感が漂いますが、自堕落な日常を送ってるわけでもなさそうで、身を崩さない程度に規則正しい生活を送られているご様子。「えぇーっ!?」っていう驚きのツッコミにキレがあります。
濱津さんはさまぁ〜ずがずっとお好きだったようで、確かに大竹さんとか三村さん感が漂ってます。
マニアックさがどうも感じられるのです。
そのうち本当にテレ東のドラマに出るんじゃないですかね。カメ止めの予告ですごい印象的だった秋山ゆずきさんは本当に可愛らしかったし、イケメン俳優役の神谷さんも本当にイケメンで、この2人が映画の華やか担当と言えるでしょうね。
神谷さん役の長屋さんは、血まみれで表情がわかんなくてもやっぱりイケメンなんですよ。不思議。
しゅはまはるみさんは何度も鈴木京香さんに見えました。
お母さんっぷりがすごく好きでした。
真魚さんは濱津さんと10歳しか違わないのに、娘役がぴったりなんですよね。
アイス食べながらTVでイケメン見て、「っつ〜っっ…!」って悶えるシーンが好きでした。ADや音声、制作側の役者さんたちは、役者なんだということを忘れるほど。
1回目ではこのへんまだ混同しながら見てた気がする。
あ、この人たちも俳優さんか、と思って見ると、その魅力に唸りたくなります。
J:COMのCMでも超個性的などんぐりこと竹原芳子さんもまた!
「合うかもわからんね」
このセリフがツボです。最後に、カメ止めの好きなセリフ・シーンをランキングして、1人興奮して終わります。
第1位 「…わっっっかりました!」(日暮監督)
第2位 「見てるでしょーがっっ!」(日暮監督)
第3位 「出すんじゃない…っっ出るんだよっ!!」(日暮監督)
第4位 「(アイス食べながら)…っつぅ〜っ…」(日暮真央)
第5位 「アドリブ入ってます…」「戻ったぁ…」(吉田)
第6位 「これって人種問題…」(神谷)「あるかもしれんね」(笹原)「あの〜人種問題って…」(山ノ内)中途半端だけど6位まで。すぐ思い出せるものだけなので、正確なランキングでもなく。
誰も見てなくてもランキング訂正するかもしれず…。
思い出すために結局3回目再生しちゃいました。
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「ウォーク・イン・クローゼット」
綿矢りささんが好きです。
「勝手にふるえてろ」から「インストール」「蹴りたい背中」とさかのぼって読んでみても、書き出しの疾走感にいつも心をつかまれます。今日読み終えたのは「ウォーク・イン・クローゼット」
綿矢りささんはどこかで何か変化があったようで、いわば少年っぽさが特徴的だった主人公が、どこかから「女」を強く打ち出すキャラクターになった。
それも「選ばれたい女」。
きっと綿矢さんご自身は少年っぽい一面もあるはずで、でもあの美貌。
「女」として見られれば見られるほどに湧き上がる優越感と嫌悪感を、嫌というほど感じてこられたのかもしれない。
書き出しの疾走感はやっぱりどこか少年っぽくて、だからぐいぐい読んでしまうのです。男の前で着る服、女友達用の服、1人で都心に出るときの服。
用事に合わせて着る服を変えるのは女だけだろうか。男性もそうかな。
その昔、合コンの前にわざわざ服を買いに行ってたのは、前シーズンに買ったはずのふわふわニットがいつの間にか「自分色」になり、新品から漂う「女子感」をチャージしに行くため。
選ばれたいのだから。
つまりはそういう目的。
選ぶ、選ばれる、見つけたい、見出されたい。
綿矢さんの小説はいつからかこういう男女が主役となり、そこに命をかける薄っぺらさへの痛烈な批判が全体に漂う。
それでいて自分こそが「選ばれたい」1人で、痛い虚栄心や敗北感、屈辱のあたりも主人公を通して吐露され、そのリアルさに自分を重ねずにはいられないのです。
選ばれた私、選んだ俺、選ばれないほうがましだった夜。「選ばれ」の中の、一体どこに幸福があるというのでしょうね。
誰かが自分に触れてくるまでの空気感、そこまでは確かに幸福だった。
抱きしめられても太もも撫でられても、そのタイミングや伝わる熱で、幸福な選ばれなんかじゃないと悟る。
相手が本気じゃないから?
「選ばれ」の中において本気を求めるとか、一体なんなんだろう。本気ってなんだろうか。綿矢さんのストーリーって、最後は不思議と友情が描かれます。
男女の恋愛未満の信頼関係、敵同士だった女子のわかり合いや、女の友情の固さ。
友情こそが選ばれとは無縁で、身も心も開ける。
どんな背格好でも服装でも、親しみ湧いたのはもっと共通する何か裸のとこ。
友達を選ぶ人っているのかな。いたとして、それは楽しい友情かな。綿矢さんの小説では、ふわふわニットを着た自分が男性に抱きしめられる幸福も描かれつつ、せっかく頑張っておしゃれしてきた服をろくに褒められもせず脱がされることの虚しさも表現される。
そして「やっぱり今日は…」と女性が抵抗を示すと、「泊まりってなると女のコはいろいろあるもんね」と言う男性。「女のコだから抵抗するんじゃなくて人間として…」と心の中でつぶやくも、彼に届きようもない。
恋のはじめの男女だけが、関係構築すっ飛ばして体だけで成立するってもんでもないだろうと、あとでわかってきたりするものの、体の一体感はすべてを超えると期待する。
「選ばれ」にいち早く到達できた気分にもなるのだし、いち早い所有も。
本当は男女も誰しも、こうは面倒くさく生きてないのかもしれません。
自然に好きな人ができて、自然に交際に発展する。
「選ばれ」とは無縁の関係性が発生したら、どれだけいいことかと思うのに、なんか挑戦してみたり、けしかけるのはこの自分かもしれなくてね。主人公の早希は男のためにするおしゃれが好きなだけじゃない。
買った服を自分の手で丁寧に手洗いして洗剤にもこだわって、休日一日使って仕上げる、そうしていい風合いになった洋服もこよなく愛する。
クリーニングに出せばいいところを、節約も兼ねて手洗い。
そういうのってわざわざアピールしないと、誰にも届かないような時代かな。
早希はこんな休日の過ごし方、合コンではマイナスイメージになるとむしろ隠したり、うっかりしゃべってやっぱり後悔したりする。
今一体どんな時代?どんな男と女が恋するというの。
選ばれの延長が恋愛なんだったら、友情に信頼を置いてそれで生きるんでいいやって、思う人が増える一方の時代かな。
綿矢さんは時代をすごく見つめている。
今という時代の自分、男女、変わりゆくものと変わらないもの。
時に辛辣だけど、よくここまで見つめる!と共感しきりなのは、自分の中のもやもやが著されてるように思うからかな。
他の本も読んでみよう…と、手に取って1ページ1行目の疾走感ですぐ心を持っていかれる。ぜひ本屋でめくってみてほしい綿矢さんの本です。 -
水谷千重子50周年記念公演
昨日、明治座の水谷千重子公演に行ってきました。
お芝居とライブの2本立てです。
3年前には40周年公演、「キーポンシャイニン歌謡祭」へ行きました。計算がおかしいけど。
けれども今回のお芝居「とんち尼将軍一休ねえさん」は、その主役が水谷千重子というのだから、なんともややこしい。
友近だけど友近じゃない、千重子としてお芝居を見る。
女の一休さんが夜は遊女となって、悪党と病気で廃れつつある人形町を救おうと、とんち使って千重子が奔走する物語。「千重子でありながら友近」という仕掛けがベースにあるので、一体何段重ねのもの楽しんでるんだというややこしさ、その嘘くささがいいのです。
田山涼成さんや高橋ひとみさん、原田龍二さん、はたまた明治座付きの役者さんの一流のお芝居がとっても素晴らしかったです。
中でも原田龍二さん。正直、大麦若葉のCMから目をそむけっぱなしの私ですが、侍役の原田さんがほんっっとにかっこよかった!!
原田さんは、人の「暑い」という言葉を聞くと脱ぎたくなるという、どこかイカれつつ正義感の強いお侍さん。
最初はお決まりの裸にニヤニヤしてた私でしたが、あまりにも脱ぐ回数が多かったからか、本当にイケメンだからか、脱ぎそうな仕草するだけで「どきゅん!」と胸打つようになってしまった。
殺陣もまた素晴らしかったのです。千重子も「原田の龍ちゃんの殺陣見たァ〜?」って、2部のライブで客席と感動分かち合うほど。
高橋ひとみさんは19歳の娘という役でしたが、また本当に可愛い(笑)
その高橋さんをお姫様抱っこする上半身裸の原田さん。
不思議にエロ〜・・ってドキドキしちゃいましたよ。
高橋ひとみさんの”しなり”も相当な色気です。一番笑ったのが、ゆりやんレトリィバァ演じる人気No.1花魁が踊るシーン。
歌うのは千重子。
「よっ!」「ほっ!」と千重子の掛け声に合わせてゆりやんが小刻みに「キッ!」と見得を切る、あれは何なんでしょう(笑)YOUさんは年老いた薬師の役でしたが、きれい!
映画やドラマにもよく出られるYOUさんです。
ゆったり優しい役が合うんだなぁと思いました。
ずんの飯尾さんとやすさんの”間”からは人柄も感じられたし。
バッファロー吾郎Aさんは一休のいるお寺の住職。
ライブで千重子が「吾郎Aちゃんは声がでかくてよかった」と評価してましたが(笑)
本当によく通る声で、お芝居というのは滑舌や聞きやすさが命だなとつくづく思いました。そのライブで千重子は役者さんについて、ずらずらーっと共演した印象をどんどん語っていくのです。よどみなく。
これは千重子を演じてるからこそ語りやすいのか、それともやはり友近のまとめ力・的確さ。
笑わせることにも手を抜かないのだから、とにかくすごい!と感嘆。
それで笑わせたらすぐ歌に入る。人を退屈させない。
退屈させたら終わりという大事なツボを押さえてるかのようで、MCもお見事だったのでした。この日のゲストは宮迫さん、というか春澪ちゃん。
この2人は歌でもほんとプロですね。
友近の喉の強さも驚きでしたが、宮迫さんの声量もまた。
「ロンリー・チャップリン」デュエット直後に千重子も、「春澪ちゃんったら声量がすごい。星稜高校出身?バカ言ってる」って(笑)そこから松井秀喜→石川県→福田和子という、にわかに信じられない接点が千重子から明かされたりして、「明治座で福田和子の話したって書き込んじゃダメよ!」「小島慶子ちゃんに怒られるから」って(笑)千重子は小島慶子さんをやたら恐れてました。
そういえば友近の出身地って愛媛・松山。福田和子も松山市出身。
福田和子が逮捕されたのは福井。千重子は福井出身・・・・って、友近は福田和子も自身に忍ばせて千重子やってんじゃないかと想像したら可笑しくなりました。
ほかにも福田和子ネタいっぱい持ってそうだった。
おおっぴらには言えないだろうけど、きっと心を寄せてる気がします。「千重子は吉原炎上という映画がとっても好きなのね」
「そのドロドロしたオープニングみたいな曲書いてちょうだいって、二葉先生にお願いして作ってもらいましたので聴いてください。”五月雨道中”」「誰だよ」「何なんだよ」って心のツッコミもいちいち顔に出さないけれど、楽しみ方はちゃんとわかってて。
あぁ〜「ダサ」ってなんでこんなに平和なんでしょうね。
この記事にも(笑)を多用してみましたが、進んでダサに浸かりたくなるのです(笑)ラストの曲は高橋真梨子さんの「for you…」
手拍子もできないほどシビれました・・友近の歌唱の素晴らしさ!!
感動したこと全部書くとキリないのですが、私たちの「楽しむ!」という意気込みよりずっとずっと、出演者たちの「楽しませる!」が上回ってた気がして、圧倒されたステージでした。友達と改札の前で、別れがたい中でも締めくくりの話題、「田山涼成さんのキレと引き締めがすごかった」ということ。
ベテラン役者さんの存在を消したり出したりするメリハリにも確かに感動してたのです。自分へのお土産として千重子のアイテム、焼き豆腐がプリントされた手ぬぐいを買いました!
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蒲田で「万引き家族」
蒲田という駅には初めて降りました。
「万引き家族」上映スケジュールと今日の仕事終わり時間が、ちょうどよかったのがテアトル蒲田だったのでした。
オレンジがかった商店街が嬉しくなるほど昭和で、楽しみながら歩くこと5分。

がら空きでした。
お客は私入れて10人ほどで、しかも9割高齢者だった。
映画館のスタッフの雰囲気も街の商店街そのもので、足腰がつらそうなお年寄りへのサポートや、「膝掛け要りませんか〜」とわざわざ配りに来てくれたりとか、これから始まる映画とすでに地続きみたいに和やかでした。なんといっても子役です。
祥太とりんちゃん。
2人を見てるだけですぐ涙腺が緩みそうでしたが、前半はなんとかこらえました。
Amazon小麦粉アレルギーのあの子を見ただけで(佐々木みゆちゃん)、しばらく泣けてしまうかもしれません。
祥太役の城桧吏くんは、これから「西郷どん」に出てくると!
あの子はすごかったです。
あの子が成長するに従って目に見えてくるような家族との境界が胸に迫りました。樹木希林さん演じる狡猾で悟ったおばあさんにしても、リリー・フランキーさんの情けなさや無邪気さ、基本キツそうな安藤サクラさんににじむ幸福感や、松岡茉優さんの愛情、それから駄菓子屋の柄本明さんにしても、一つ一つ感じまくれば即・涙だらけです。
なんでだろう?リアルだと泣けてくるのかな。
「正しさ」は、人を安心させるかもしれないけど、人を排除もするのだろう。
簡単に人を絶望にも陥れる。
「なんか間違ったこと言ってる?」と言われるのが大嫌いな私ですが、そう問い詰められても口元ゆがめて泣くしかなかったいつかのことを、まるで引き取ってくれたような安藤サクラさんの”泣き”でした。
あのケイト・ブランシェットさんも絶賛されたシーンです。
この国は安全なんだけどさ、きれいに見えるし、それもこれも「正しさ」が整備されてるからと言えるのかもしれない。
「犯罪者と出会わない街に住みたい」と誰かが言った。
街が悪いわけでもなく、本当は何が悪いとかも曖昧で、ルールの中の安心をとりあえず選択してる自分はとても弱い。
映画の中の家族はそのあたりとても強そうに・図太そうに見えた。
けども、「正しさ」によって解体される。
「される」という被害語すら許されない社会かな。
ーー愛があったんだよ、確かに。
感じてるだけじゃ全然だめだったなんてね。
「ちゃんとしたもの」で証明できなきゃ愛着も簡単に解体されちゃうからみんな、正しくちゃんと得ることを頑張るのかな。映画を見たあとは、マクロビ定食屋さんに入りました。

Hidamariカフェというところ。惣菜2品で1100円です。
蒲田でもう1軒、マクロビ定食屋さんがヒットしました。
卵・小麦粉・白砂糖を使わないお店。
蒲田ってそういうムードの街なのかな。勝手にすごい下町だと思ってたら、映画館と反対側は発展してた。
京急蒲田駅もあんなに大きいなんて知らなかったな。
東京の南のほうはこれまで縁がなかったです。
タモリ倶楽部で人気の高い京急線に私、乗ったのかぁ。
「雑色」とか「梅屋敷」ね!はいはい!
そのうちいくつかの駅名が変わっちゃうらしいから、ちょっとでも触れられたのは嬉しかったです。
(映画の写真はいずれも万引き家族公式サイトより)
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杉浦日向子さん・江戸の話
この間、本屋で見つけたのは杉浦日向子さん特集本。

漫画家でもあり、エッセイストでもある杉浦日向子さんは、NHK「クイズお江戸でござる」の解説者であり、江戸風俗研究家。
46歳という若さで亡くなられました。
私は杉浦さんの著書ですっかり江戸が好きになったし、前世は江戸人だったんじゃないか…と秘かに思ったりしました。江戸人の生き方には「方針」などない。
大火の多かった江戸。
3、4年住んでて火事にあわぬ人はいないと言われるほどだったようで、だから江戸人の住まいはとてもシンプルです。
一生のうちで着るものなんて5、6着。家も燃えやすい材質。
捨てるもの何もないみたいな身軽な生き方。
持たない・出世しない・悩まないが江戸人三原則だそうで。
私の一人暮らし歴も10年になりますが、8年ほどは家具を買えませんでした。
家具家電付きの部屋を転々としてた。
ベッドや冷蔵庫といった大きなものを「所有する」ということが重荷でしょうがなかったのです。
「何かがあってそのうちここを離れる」
それは私の観念としてずっとつきまとってるもの。
私の前世は江戸人だったんじゃないかな〜なんて。けども2年前にやっと家具家電を買いそろえました。
それもこれも、今の住まいを大変気に入ってしまったから。
江戸を感じられる場所に住んでいるのに、「ここに落ち着こう」と方針定めちゃったのはなんとも皮肉なことですがね。杉浦日向子さんの漫画代表作といえば「百日紅」。
葛飾北斎と、その娘であり助手でもあるお栄の物語です。
お栄といえば、宮崎あおいさんがNHKで去年演じられてました。
(ドラマの原作「眩」は朝井まかてさん著)
お栄は口が悪くて、北斎と住む部屋は足の踏み場もないほどぐちゃぐちゃ。
嫁に行ってもすぐ離縁。火事を見にいくのが好き。
江戸の女性といえば、働き者で尽くし屋のイメージですが、杉浦さんの著書を読むと、このお栄の姿こそが江戸の女性だったのかなぁと思ったりします。
江戸の男性は8割が生涯独身だったようで、嫁をもらってこき使うなんてしたらすぐ逃げられちゃう。夫の方が妻に尽くしてた時代。
家で旦那の帰りをじっと待つってこともなく、ボーイフレンド家に上げちゃったりとか。うーん、理想的。それを知ったなら、片づかない本もそれでいいように思えた。
杉浦日向子さんの部屋もそんな感じだったみたい。
欲しいものがすべて手の届く位置にある生活。
とかいって数ヶ月後、誰かの何か読んで断捨離最高とか言ったりね。
そんな気配もなくはない。 -
「そういうふうにできている」
やっと買うことができました。
さくらももこさんのエッセイ「そういうふうにできている」。どこの本屋に行ってもAmazonですら、このエッセイだけが入荷待ち状態でした。
今では各エッセイの増刷版が店頭に並んでいます。
切ないのは、ももこさんがもう亡き人として紹介されてることでした。
売り切れるだけあって一気に読んでしまいました。この本はももこさんの妊娠・出産について主に書かれたものですが、ももこさんはそのご経験、とりわけ帝王切開の手術について独特の表現をされているのです。
手術を「これまでの人生で最も死に近い状態」と表現され、局所麻酔中には、かねてから関心のあった「脳と意識と心」について貴重な体感があったようでした。
そんな局所麻酔状態で聞こえてきた赤ちゃん誕生の瞬間について。遠い宇宙の彼方から「オギャーオギャー」という声が響いてきた。私は静かに自分の仲間が宇宙を越えて地球にやってきた事を感じていた。
私はなんだかここですごく泣いてしまった。
不思議に強い共感か、新しい表現への衝撃か、感じては消え去るような波に襲われ、本を閉じてしばらく泣いてたほどでした。
妊娠・出産についてとにかく淡々と綴られていた、そのクライマックスに感じたからというのもあるかな。
赤ちゃんを「宇宙を越えてきた仲間」と表現した人は他にいるでしょうか。ももこさんはこのエッセイで、ご自身の変化を実にクールに、そして「なぜなのか?」をひたすら観察ふうに語られています。
自称“快便女王”であるももこさんが体験した苦しい便秘の章では、子どもがおなかにいるのにギリギリまでリキんじゃう描写に、手に汗握るほどのスリルを感じました。(妊婦は力んではいけないと注意書きあり)
しかしそれができるのも、ももこさんが「もうそこまで来ている」と、体内・肛門周辺とじっくり向き合ったゆえで…。またどんな感動シーンでも、顔に縦線入ってるような「やべぇ…」という動揺にあふれていて必ず笑わせてくれる。
ハッピーな笑いというより、この作者マジやばいよね…と思わせる巧みさ。
なのに泣ける!さくらももこさんは、TVアニメ「ちびまる子ちゃん」からの世間一般のイメージはよくわかりませんが、「子どもの無邪気さをハートフルに描く温かい人」だとしたら、コミックやエッセイから漂うものは随分違う気がします。
時に残酷な子どもの視点も忘れてないももこさんなのです。
大人の正義の中に支配を浮かび上がらせたりもする。
産まれた子どもは自分ではない、全く違うひとりの人間、とおっしゃってたことも印象的でした。コジコジでは、登場人物みんな「メルヘンの住人」で、1人として同じキャラクターがいません。
ももこさんの作品では、お互いの存在を付かず離れず程度に認識しつつ生きている、という世界が繰り返し描かれている気がします。
それに、どこか江戸っ子風な無常観が漂うのです。
排除しない。ただ有るということを見つめる。
それは人だけじゃなく、なんにしても。なんとももこさんは、体外離脱体験者のロバート・モンローの著書を読んだことも明かしているのですが、それは巻末のビートたけしさんとの対談で語られていたことでした。
横尾忠則さんに、「(手だけが動いて描いてる感覚を)結局それは霊的なものなんじゃないか」と言われたというお話まで。
「そういうふうにできている」カバーのキラキラした模様が小人だったと気づいたら、目に見える全体の印象まで急に変化した。
宇宙を感じるだけで俯瞰の感慨がこみ上げてくるようなそれと、なんだか似ているような…。日常感に溢れてるはずのこのエッセイを全て読み終えたあと、なんともスケールの大きい気持ちに包まれたのでした。
ももこさんはそういう表現者であることを、またひとつ知れた気がしました。 -
さくらももこさん
さくらももこさん逝去のニュースは大変にショックでした。
私は「りぼん」で「ちびまる子ちゃん」の連載をまさに見つめてきたのですが、
その後、中・高と、どういうタイプの子と友達になるかといったら、やっぱりそれまでに触れてきた漫画やアニメ、音楽において共通点がある子。「ちびまる子ちゃん」や、さくらももこさんのオリジナル漫画、エッセイが大好きだった私が仲良くなる子といえば、大体みんなまる子っぽい。
顔にタテ線が入ってそうな子達ばかりでした。
そんで、仲良くなる男子もどこかみんなヒロシっぽかった。
いくらかしっかり者ならば、大体まる子のお姉ちゃんかお母さん風。昨日実家に帰って真っ先に、「ちびまる子ちゃん」が並ぶ棚の前へ行ったのです。
それで懐かしく1巻から読んだ。
確かにこのコミックを何度も何度も読んだけど、最後に手にしてから少なくとも10年は経ってしまってました。
その10年前というと、姪っ子がまるちゃんに夢中になり始めた時。昨日久々読んだ「ちびまる子ちゃん」第1巻は、今やアニメでメジャーになったまるちゃんのムードと随分違った!
そう、久々に思い出したけど、さくらももこさんが描くストーリーというのはかなりマイナー調でサブカル的。かなり辛辣だったのですよ。このさくらももこさんが描く「ヘンな顔のヘンな人」というのがどうにもツボで、小学生はみんなこういうの好きだったんだと思います。

こういうのは絶対アニメじゃ見られないはず(笑)また、えらく古いギャグとかもちりばめられてて、わからないながらもそれがすごく楽しかったのです。
私は意識してサブカル系を好きになったわけじゃないのに、好きになる世界といえばなぜかそっち系。
ナンシー関さんとか、イカ天出身の”たま”とか、大槻ケンヂさん、辛酸なめ子さん。それに昨日まで読んでた蛭子さんの本には感銘を受けるばかり。
さくらももこさんによって私の世界は培われたんだなぁ〜!と、改めて認識したのでした。
特にブスとかバカとか繰り出すセンスの鮮やかさには、15年ぶりに読んでも「かぁ〜っ!」と胸が熱くなります。ほんっとにコミックはおもしろい。そこでさくらももこさんのホロスコープです。

やっぱり!!
私が好きな表現の人は、かなりの確率で「乙女座持ち」なのです。
さくらももこさんは乙女座で火星・天王星・冥王星がコンジャンクション。
乙女座はとにかく細かいので、漫画家は適職なのですよね。
「ちびまる子ちゃん」のコミックも、ほんとに細かいツッコミがところどころに入ってて、それがとにかく「利いてる」のですよね。太陽は牡牛座で、太陽金星ー海王星のオポジションです。
ははぁ〜この美しげなオポジションで、本来サブカルチックなまるちゃんは海王星的夢の世界をまとった人気者になったのでしょうかね。と、夢の世界と書いて思い出しました。
この配置、ドリカムの吉田美和さんによく似てるのです。
→DREAMS COME TRUEと!!
吉田美和さんとさくらももこさんは生年月日が2日しか違いませんでした。
さくらさん5月8日、吉田さん5月6日で月は蟹座です。
ちなみに、奥田民生さんは5月12日生まれ(月は天秤)。
みんな同い年の1965年生まれ。月以外はみんなサインが同じです。
かねがね1965年生まれはすごいと思ってましたが、5月初旬生まれはとにかくすごいのですね。
みんなこの太陽ー海王星夢ラインと、スーパー乙女ー魚ライン持っているからでしょうか。さくらさんは月が獅子座なんですよね。
自分との共通点が嬉しい。
私自身、今でも自分のベースは小学生の目線であるのです。
子どもだったときの気持ちや思い出はずっと鮮やかに残ってます。
ここも見事にくすぐられたんだろうな。
小学生時代の親友と、私はさくらももこさんの世界をいつも楽しく共有してたのですが、彼女は太陽獅子座。さくらさんは、というわけで牡牛ー獅子のスクエア持ちなんですよね。
獅子ってやっぱりお笑いが好きだし、ももこさんも漫画家じゃなかったら落語家になりたかったというエピソードがありました。しかし牡牛的にどこかどんくさい笑いというか、それをウリにしてるというか。
どんくさい人を辛辣に笑うまる子。
それはともぞうじいさんとか、自身のことも「のろま」とかってよく自虐が出てきます。
ちびまる子ちゃんの一人称が「あたしゃ」だし。
なんだか「ダサ」に包まれるその世界を、さくらさんは乙女座的なセンスでバッサリ斬る。
水星が牡羊なので、大体が率直すぎて「失礼」なのですが(笑)、水星ー月がトラインだからか、子どもや女性に好意的に受け止められるのでしょうね。しかしこの火星はきつそうですね。
1965年とかこのあたりの生まれの方はとにかく働くんですよ。
働きすぎて活動を休止したり体壊す方は多いです。
それでも活動のスピード落とすことを許されなかった方もたくさんいたと思います。さくらさんといえば、りぼん編集部の「みーやん」と結婚されたことは本当に驚いたし、嬉しかった記憶です。
よく編集後記のあたりに、さくらさんが描くみーやんが登場してたのですよね。
(あと岡田あーみんも)
漫画の中にもよく出てきます。しかし離婚されてしまったし、なんでもみーやんが、ももこさんの作品に口を出すようになったと?
火星は「縁のある男性」で、この火星は乙女でこんなタイトなことになってますから確かに口うるさそう。また、「出版社勤務」というのも表されてるといえます。
「夫」としても、太陽にもなんらか表されてるはずと思いますが、そういえば太陽金星ー海王星のポワ〜ンとした感じは、お父さんヒロシという愛らしさにも見えますけどね。また、コミックの表紙もまた、太陽金星ー海王星的・愛しい夢ランドです。
ちなみに、全部は買えないけどどの巻を買おうか迷っているならば、1巻と3巻がおすすめです。
3巻の巻末には、ももこさんが初めて一人暮らしをするときのお母さんとのしんみりとしたストーリー「ひとりになった日」が収められています。1巻はとにかく異質です。2巻からはもうアニメ的なツッコミが入ってるのですが、1巻は巻末のオリジナルストーリーコミで「さくらももこはヤバイ」というマイナー感にあふれてて爽快ですよ。
オリジナルストーリーも、挿し込まれたエッセイも、どれも本当におもしろいです。
辛辣なはずなのに心をあったかくしてくれる。
そんなイラストも文章も書けるさくらももこさんは、ものすごく才能あふれる方なんだと改めて感動したのでした。
子どもの時夢中になったものに、今の私があのころのまま・あのころ以上に感激しちゃう。
庶民の心を忘れないお人柄も、本当に大好きでした。追記:ちなみに、ちびまる子ちゃん第2巻では、岡田あーみんさんの「お父さんは心配症」との合作があり、やっぱりどれも買いです。
